緑内障とは
緑内障は、眼圧が上昇することで視神経に異常が生じ、徐々に視野が狭くなったり、視力低下が生じる病気です。
初期症状はあまりなく、ゆっくりと進行していくため、患者様がご自身で気付くことが少ない傾向にあります。進行が進むと視界欠損や視力障害が起こることが多く、対象物がぼやけるなどの症状が現れることもあります。
この病気は、日本人の中途失明の原因として1位の疾患です。定期的な検診を受けて早期発見に努めましょう。もし発症した場合には、早期に適切な治療を受けることが大切です。
緑内障は早期発見・早期治療が重要です
緑内障は白内障とは異なり、手術による完全な回復は望めませんので、治療は進行を遅らせることが主な目的となります。適切な治療を行わなければ日常生活に支障が出る可能性がありますが、早期発見すれば点眼薬などの治療で健康な方と同じ生活を送ることができます。
当院では、緑内障の早期発見と早期治療に力を入れております。緑内障は初期の場合も眼底検査で発見できることが多いです。定期的な眼科検診を受けましょう。
原因
緑内障の原因は複数あり、その一つに眼圧の上昇が挙げられます。房水の流れが阻害されることで眼圧が上昇し、緑内障を発症します。また、他の疾患や薬剤、先天的要因なども緑内障の原因となります。中でも、日本では正常眼圧緑内障が多くみられ、眼圧が正常値にも関わらず発症します。進行を抑えるためには眼圧をコントロールすることが必要です。
検査
視力検査
緑内障は進行すると視力低下が現れます。他の眼疾患と同様に視力検査が重要です。
眼圧測定
眼球の圧力を測るために角膜にセンサーや空気を当てます。一般的に、正常な眼圧は10〜21㎜Hgとされていますが、視神経乳頭の陥凹がある場合には病気の進行を停止させるため、正常値の範囲内でも眼圧を下げる必要があります。
眼底検査
視野異常が現れる前に起こる視神経乳頭の異常を直接観察します。眼圧が正常である正常眼圧緑内障の診断に必須の検査で、緑内障の早期発見に有効です。
OCT(眼底三次元解析検査)
網膜を表面だけでなく、3次元で視神経乳頭の状態や厚さを含めて確認できます。
視野検査
緑内障の進行状況を確認するために、視野欠損の有無とその範囲を検査します。視野の一部が失われていても、視力には影響しないことがあるため、視野検査を受けましょう。
隅角検査
虹彩が接する隅角と角膜の状態を調べる検査で、眼圧が高く、隅角が狭い場合には閉塞隅角緑内障、広い場合には開放隅角緑内障と診断されます。
治療
薬物療法
眼圧を下げるお薬には、主に房水の産生量を減らすお薬や房水の流れを促進するお薬があります。通常は、1種類のお薬から始めて効果を観察し、必要に応じて2〜3種類のお薬を併用することもあります。
レーザー虹彩切開術(LI)
原発・続発閉塞緑内障に対する瞳孔ブロックを治療するために用いられるレーザー治療です。
点眼麻酔を行い、虹彩周辺部にレーザー照射を行います。この処置で虹彩に穴を開けることで、前房と後房の圧力差を調整し、隅角を広げて瞳孔ブロックを解消します。
片方の目で瞳孔ブロックが発生した場合、両眼のレーザー虹彩切開術を予防的に行うことがあります。
選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)
緑内障の目詰まりしている線維柱帯にレーザーを照射して、房水の流れを改善します。
SLT(Selective Laser Trabeculo plasty)は短波長で低エネルギーのレーザーを用い、線維柱帯の色素細胞のみに的確に照射します。
3分程度の短時間で行うことができ、眼圧を下げる効果があります。
治療後は眼圧のコントロールを見ながら、必要に応じて繰り返し治療を行うこともできます。
当院では、外来で患者様の視野の進行を確認し、点眼の追加や変更と同じように、SLTレーザーを用いて眼圧を下げる治療を行っています。
緑内障の手術
薬物療法などを行っても効果が不十分で緑内障が進行する場合には、眼圧を下げる手術を行うことが検討されます。
白内障術併用緑内障マイクロデバイス(アイステント)
アイステント(iStent)は、極小の金属製チップ(重さ:0.00006g)をシュレム管に挿入することで房水の通りを改善します。金属ですが、MRI検査を受けることが可能です。白内障手術を行った後、専用の挿入器具を使用して挿入することで、術後の回復が早く、眼圧低下と視機能の改善を期待できるのがメリットです。
線維柱帯切開術【トラベクロトミー】
眼圧を下げるために、目詰まりした線維柱帯を切開して房水の流れを改善する手術です。切開された線維柱帯を通って房水がシュレム管へ集まり、静脈へ流れます。器具が細いため、角膜(黒目)の小さな創から挿入し、切開することができ、結膜を傷つける心配がありません。白内障手術との同時手術が多いですが、単独手術も可能です。手術後、ほとんどの方は数日で回復しますが、出血が起こることがあり、数日間は霞んで見えることもあります。
線維柱帯切除術【トラベクレクトミー】
房水の出口のバイパスを形成する手術です。結膜と強膜を切開して、線維柱帯と虹彩の一部を切除します。眼内の房水が眼外に流れる道を作ります。切除された線維柱帯の部分が出口となり、房水は強膜を切開した創がつくりだす隙間を通って結膜の下に流れ、結膜から血管に吸収されます。
チューブシャント手術
眼の中にチューブを留置し、房水をプレートから結膜下の眼球周囲深部に流す手術です。
緑内障チューブシャント手術は新しい緑内障術式として認可され、近年徐々に施工数が増加しています。
繊維柱帯切除術と比べ、合併症の頻度・程度がより少なく、安全性の高い治療です。